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解き放たれしソフトウェア

GNU/LinuxなどFLOSSについて書いてみるつもり

死に体のマイクロソフトの足を引っ張る日本社会

エッセイ プロプライエタリ

アップルコンピュータは収益構造を既に改めてきていて、MacOSBSD ベースに換え、「オープンソース」戦略にしてソフトウェア製作の範囲を抑えてきています。 Macintosh はOSのみならずハードウェアを含めた呼び名でありハードウェアも売ることで売上を出しており、ちなみにそれは iPhoneiPad 等と同様です。

アップルもグーグルも、「アプリ」売り場や課金インフラを提供することで恒常的に売上を出しています。

また両社は、オープンソースコミュニティにグングンと食い込んで一蓮托生度を高めています。アップルは BSD 、グーグルは Linux と。

それに対してマイクロソフトは、もとからハードウェアを売る収益構造をあえて採らずに Windows を売ってきました。 MS-DOS の時代からそうです。ハードウェアメーカーにライセンス販売し、各メーカーが当該機種版の MS-DOS を販売していました。 つまりはパッケージソフトウェアを売ることに依存してきた企業です。 定期的にリリースアップグレードをさせ、その度に代金を取ってきました。

しかし今やパソコンとOSの販売「純増」は頭打ちであり、他方でソフトウェアの膨張と多様化は飛躍的に進んでいます。

企業の経営を圧迫するのは固定費で、その主なものが人件費です。

ユーザサポートに関しては、マイクロソフトは(アップルと異なり)パソコンメーカーにも頼っていますから、サポート人員はある程度は削れていると思われます。

他方で、昔からエンジニアを雇って製作をしています。 このままソフトウェアの製作にかかる人を雇い続けると恒常的に人件費がかかります。毎月かかります。 人件費を賄うには売上も恒常的に得たいのでしょう。(ちなみにこれは日本の多くの企業にとっても今の本音であり、世界の「先進国」(開発完了国)の趨勢です。)

マイクロソフトWindows 8 以降、 10 では完全に、売上構造を改めました。 パッケージソフトウェアとしてのOSを売ることを止めて、「アプリ」やサービスを売るというアップルやグーグルのやり方を漸くパクるようになったわけです。

クローズドソースからオープンソースへと、模索を始めています。 多くのエンジニアを雇うより、外部に依存したいのでしょう。 製作用のソフトウェアも無料提供するようになってきました。

今迄ずっと、 OS もブラウザもクローズドソースで自作してきたことが、足枷になっています。 それに比べればアップルやグーグルは独自のブラウザをもっていますが、オープンソースモデルを利用しています。 後れをとって苦境に陥っている現状です。

御存知の通り、マイクロソフトは今、ユーザに対して執拗に「Windows 10 にアップグレードしろ」と強引に押し付けています。 そうしないと収益構造の移行が実現しないからです。

同じように、新規のパソコンにバンドルするWindowsも 10 に限定しようとしています。 (その代わり、代金をべらぼうに下げているのでしょう。)


マイクロソフトWindows や InternetExplorer のシェアが未だ高い特異な国に、日本と韓国があります。 政府機関や大企業の多くもマイクロソフトに依存しています。 権威主義的で、事勿れ主義で、多数派に所属した方が安心だと思っているからでしょう。

また昔は、殆どの業務は Macintosh では不向きでした。「マックは画像や音楽向き」と認識されていました。それに、 Macintosh は高価だし、アプリケーションソフトウェアが限られているということもありました。アップルは自社でしか Macintosh を売りません。「日本資本」の企業、例えば日本電気富士通などなどは、Macintosh を売れません。 それで多くの人は Windows を採用していて、データのやり取りや操作において互換性を保つためにますます Windows を採用したわけです。

組織内部で必要なソフトウェアを製作するときにも、その多くは Windows 用で造ってきました。 そのソフトウェアは、 Windows でしか動かず、あまつさえ Windows のバージョンも選びます。 だから未だに、 XP 以前用のソフトウェアを使うために 7 以降に移行するのに支障を来している事例が少なくありません。

このような事情があるので、親方マイクロソフトが「これからは Windows 10 一本で行く」と言い出したのに対して、日本では半ばパニックになっています。 現地法人である日本マイクロソフトも、本部決定と顧客要望との間で板挟みになっています。近年は、本部の決定を「聞いていない」ということもあるらしく、それは言い訳ではなく本当に事前調整無しになってしまったのかもしれません。

パッケージソフトウェアを売るという収益構造で沢山稼いでいた時代は、日本というのはマイクロソフトの大のお得意様で、 マイクロソフトの中ではきっと、日本マイクロソフトは「花形」だったのでしょうね。

今は、日本がマイクロソフトの足を引っ張っています。

そんなわけだから例えば、 Chicago (Windows 95) のブームを回顧するような懐古趣味だって、当時の日本マイクロソフトの従業員達から出て来もするわけでしょう。 「Wintel」(Windows パソコンの CPU は Intel の事実上一択だったマイクロソフトインテルの蜜月)時代だとかありましたから、皆自動的に Windows を間接的に買っていました。 自作パソコンに Windows を買うというのも、かつては今よりも圧倒的に一般的でした。 Chicagoブームの成功体験があったので、Windows 7 までは、日本マイクロソフトはパソコン自作派に随分と売り込みをかけて「お祭り」を演出してきました。

今は、カネを出してくれるパソコン自作派といえば(3D の)ゲーマーで、ゲーマーはハードウェアを高性能にして、ゲームが Windows 用だから Windows にするのです。そして、そのゲームの収益構造も今や「オンラインゲーム」での課金が一般的で、パッケージのゲームを買い切りという形態は減っています。 親方マイクロソフトはゲームも売るようになって久しいですが、「ゲームアプリ」で課金するというやり方がますます進んでくるでしょう。 実際に Windows 10 には Xbox Live がプリインストール済です。

日本社会はマイクロソフトに高度に依存してきました。 その潜在的な危険性がますます表面化してきているのです。 だから例えばロシアは、近年は特にアメリカを嫌って独自に閉じこもる政治と社会風潮に揺れ戻してきていますから、政府機関の OS も GNU/Linux にしようと画策しているそうです。やるとすればおそらく、独自のディストリビューションを製作するのでしょうね。(そういえば北朝鮮政府も、政府自作のディストリビューションを使用させているみたいですし(勿論、諜報付き)。)

先述の通り、未だに Windows 依存が激しいのは日本社会に特異なことです。 例えばイギリスは、公務に使用する OS を Windows に限定しておらず、各 OS の管理方法のマニュアルを作成しているくらいです。

考えれば当然のことですが、「Windows がダメならば Macintosh にしようぜ」というのは解決になりません。 それでは、依存先をアップルコンピュータに替えるだけのことで、潜在的な危険は無くなりません。さらにいえば、ハードウェアもマックになってしまい、一面ではますます依存が高まってしまいます。選択肢が無いわけです。

ハードウェアをどこのメーカーにするかという点でも、ソフトウェアの制作や保守元をどこにするかという点でも、選択肢を握っている方が安全です。 厳密に言えば、情報公開と自己決定があるから、損失があっても受け入れられる自己責任が成り立つということです。

生殺与奪を握らせて馴れ合った方が安心だという悪しき習性が日本人には根深いですが、この特異性を何時になったら反省するのでしょうか。 それでは対等な人間関係にはなりません。